プロジェクトストーリー

WORKS

広大な敷地を有する成田空港では常にどこかで巨大プロジェクトが進行中です。職種や部署の枠を越え、多様な経験や知識を結集して、新たな価値を創り出す挑戦。そのプロジェクトの舞台裏を、担当者の想いとともにご紹介します。

“日本”を味わえる上質な飲食専用フロア
「JAPAN FOOD HALL」をオープン

2023年9月、第2ターミナル出国手続き後エリアにオープンした「JAPAN FOOD HALL」。ターミナルを増築し作り上げた一大プロジェクトの計画のねらい、実現に向けた活動を担当者の想いとともにご紹介します。

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環境に配慮し、効率性の高いオペレーションを可能とする「第8貨物ビル」を新築

2024年10月、成田空港の貨物ターミナル地区に新設された「第8貨物ビル」。日本最大級の巨大貨物施設を作り上げたビッグプロジェクトの裏側とは。実現に向けた取り組みを担当者の想いとともにご紹介します。

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STORY 01

“日本”を味わえる上質な飲食専用フロア
「JAPAN FOOD HALL」をオープン

なぜJAPAN FOOD HALLを
オープンする必要があったのか

訪日前に最も期待していたこと(全国席・地域・単一回答)グラフ

従来から飲食店舗が少ないという課題を抱えていた第2ターミナル出国手続き後エリアですが、同エリアには、複数の飲食店舗を展開できるだけのスペースはありませんでした。そこで、ターミナルを増築して、2階に飲食専用フロアを整備するプロジェクトが発足しました。
プロジェクト発足当時、訪日外国人の増加に伴い、成田空港をご利用されるお客様の半数以上を海外からのお客様が占めており、将来的にもその傾向は続くと予測されていました。そのため、出店店舗については、観光庁が実施している「訪日外国人の消費動向調査」において、外国人旅行者が日本滞在中にやりたいこととして「日本食を食べること」がランキング1位であったこと、日本人旅行者も搭乗前最後の食事として「日本食」を好まれることから、日本食を取り扱う店舗を集めた飲食エリアを展開することとしました。

オープンに向けてどのように取り組んだのか

取り組み図

ターミナル増築工事は、2019年11月に着工したものの、その後コロナ禍に突入し旅客数が激減してしまいました。「JAPAN FOOD HALL」は、当初2021年12月にオープンする予定でしたが、計画を後ろ倒しせざるを得ませんでした。計画変更により想定外の様々な課題が生じましたが、メンバーの創意工夫によって乗り越えていきました。例えば、工事が完了するも供用ができないことにより、お客様の目に触れてしまうことになった工事用仮囲いについては、仮囲いの範囲が広いことを逆手にとり、葛飾北斎の作品に現代デザインを融合させたアート装飾を施し、迫力のある空間を創出、外国人のお客様を中心に大変喜ばれました。

出店テナントのリーシング(誘致)活動においては、新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けた成田空港への出店に不安を感じるテナント企業様に対し、「JAPAN FOOD HALL」のコンセプトや誘客を図るために施した様々な創意工夫、マーケットのポテンシャル等を熱い想いを持って伝えました。

出店決定後は無事に供用させるべく、テナント企業様のサポート業務に取り組みました。出店場所の出国手続き後エリアは、空港の中でもセキュリティレベルが高いことから、出店に伴う工事やスタッフの入退場に及ぶまでルールが厳格に定められており必要な申請手続きも複雑です。そのため、テナント企業様と頻繁にコミュニケーションを図り、各種手続きのご案内やスケジュール調整を行いました。工事会社が現場に入れないなどのトラブルが発生することも多々ありましたが、その際はすぐに現場に駆けつけて状況を把握する等、関係先との対面でのコミュニケーションを心がけることで、何とか解決し、オープンを迎えることができました。

何を実現したのか

ジャパニーズモダンな雰囲気が随所に取り入れられたフードホール内

新たな飲食エリアは、免税ブランドモールである「ナリタ5番街」に隣接するエリアであること、高品質な日本食の専門店を集積した専用フロアであること等を勘案して、カジュアルなイメージの強い「フードコート」ではなく、名称を「JAPAN FOOD HALL」としました。

駐機する航空機を一望できる共用席

ジャパニーズモダンをデザインコンセプトとした「JAPAN FOOD HALL」には、日本を味わえる飲食店10店舗を集積し、客席は各店舗の店内席に加えて共用席を設置。店内席ではライブ感を味わいながらのお食事、共用席では各店舗の料理を持ち寄ってのお食事等、ニーズにあわせた利用を可能としました。駐機する航空機を眺められる大パノラマを楽しめるよう共用席を計画するとともに、出国手続き後エリアでは国内空港初となるテラス席も設けました。

国内空港初となる出国手続き後エリアのテラス席

このような取り組みの甲斐もあって、2023年9月のオープン後、「JAPAN FOOD HALL」は、お客様から大変ご好評をいただいています。また、オープン後に実施された、SKYTRAX社が実施する空港格付評価”WORLD AIRPORT RATING”において、成田空港として初めて世界最高水準である「5スターエアポート」の格付けを獲得しました。

プロジェクトを終えて

初めての大規模プロジェクトで、多くの学びを得た

事務系

リテール営業部 第二営業グループ

UEHARA YUSUKE

2012年度入社

テナントリーシング(誘致)、テナントとの契約手続き、テナント工事に係る調整、その他出店に係る
各種手続き、オープン後の店舗運営管理を担当

プロジェクトを担当することが決定した時には、供用に向けて自分の役割を全うしようと身の引き締まる思いでした。今回のような大規模プロジェクトに携わるのは初めてのことで、学ぶことが多々ありました。特に、上司や先輩が、プロジェクトの成功のために熱い想いを持って、何事にも妥協せずに取り組んでいる姿を間近で見て、プロジェクトの担当者が熱意や想いを持っていないと、社内外含め多くの関係者の協力を得ながら物事を進めていくことはできないことを強く実感しました。また「5スターエアポート」の格付け獲得については、私たちの頑張りが評価されたように感じられて嬉しい気持ちになりました。今後も「JAPAN FOOD HALL」をご利用いただくことが世界中のお客様の“旅の楽しみの一つ”となるよう尽力していきます。

日本の印象をより強く心に刻んでもらいたい

技術系(建築)

施設保全部(現施設部)建築グループ

TAKAYAMA SHIORI

2019年度入社

「JAPAN FOOD HALL」を含む「ナリタ5番街増築部」増築工事の発注・設計監理・工事監理、テナント工事図面の審査、オープンに向けた各種準備工事の発注・設計監理・工事監理を担当

私は工事の後半からプロジェクトに参加したので、空間コンセプトを大切に設計・工事してきた先輩方の思いをしっかりと受け継がなければと考えていました。そして、チーム全体で「いいものを作ろう!」という熱意を共有してきたからこそ、いいものを作り上げることができ、私個人としても自分の知識や経験に自信を持てるきっかけとなるプロジェクトになったと感じています。今後、多くの方に「JAPAN FOOD HALL」というジャパニーズモダンな空間で日本食を食べていただいて、日本という国の印象をより強く心に刻んでもらえたらうれしいです。

STORY 02

環境に配慮し、効率性の高いオペレーションを可能とする「第8貨物ビル」を新築

なぜ第8貨物ビルを建設することになったのか

国際航空貨物取扱推移グラフ

NAA運用状況

成田空港は、1978年の開港以降現在に至るまで、国際航空貨物取扱量は常に世界の空港の中でトップ10にランクインしており、日本の空港の中では約6割前後のシェアを誇っています。また、身の回りにあるスマートフォンや衣服、スーパーに売っている生鮮品等、航空機を使って運ばれている物は数多くあります。そういう意味で成田空港は日本の人々の生活を支える重要インフラなのです。
ただ、現在の貨物地区は、老朽化・分散化・狭隘化といった大きな課題を抱えています。

成田空港の貨物施設(上屋)は貨物需要が増えてきたタイミングで都度増築し、そのタイミングで上屋が必要な会社に上屋内を分割してご利用いただいてきました。それを繰り返してきた結果、開港から46年経った現在、施設は古く(老朽化)、各社がオペレーションしている上屋が至るところに点在してしまっており(分散化)且つ上屋を増築できる土地もなくなっていました(狭隘化)。
そのような中で、2019年に既存の貨物地区に隣接した広大な土地を購入できることになり、成田空港の貨物地区が抱える様々な課題を解決すべく、新しい上屋を作るプロジェクトが立ち上がりました。

成田空港の貨物施設(上屋)は貨物需要が増えてきたタイミングで都度増築し、そのタイミングで上屋が必要な会社に上屋内を分割してご利用いただいてきました。それを繰り返してきた結果、開港から46年経った現在、施設は古く(老朽化)、各社がオペレーションしている上屋が至るところに点在してしまっており(分散化)且つ上屋を増築できる土地もなくなっていました(狭隘化)。
そのような中で、2019年に既存の貨物地区に隣接した広大な土地を購入できることになり、成田空港の貨物地区が抱える様々な課題を解決すべく、新しい上屋を作るプロジェクトが立ち上がりました。

どのように建設を進めたのか

鉄骨建方中の第8貨物

成田空港では、施設の建設・運用については、基本的な考え方として、大家であるNAAが建物を建設し、その施設をお客様(航空会社様やハンドラー様等)と契約し提供する(実際に運用してお使いいただく)というスキームを採用しています。

新しい上屋をどの社に入居いただくか、社内で多くの議論を行いつつ、各社とニーズ調査等に係る打ち合わせを重ねた結果、上屋が分散化してしまっている状況を大きな課題と認識されていたANA様より「自社上屋を1カ所に集約できることはANAとして悲願。第8貨物ビルに上屋を集約するという大きな目的に向けて一緒に取り組んでいきたい」と申し出があり、そこからANA様と長期に渡る検討が始まりました。

最初は建物の形・大きさ、道路、トラック等の駐車場といった必要な施設及び規模の洗い出しから検討が始まりました。ANA様は、日本はもとより世界中の空港で貨物をハンドリングされていますので、関係者と共に海外空港の最先端の物流施設の視察を行い、第8貨物ビルにおいてどういった最先端技術を取り入れるか、どんな内装にするか等様々な視点から検討を深度化していきました。

ANA様とは定期的に打ち合わせを実施していましたが、今振り返れば、一番最初の打ち合わせの際に、双方で「良い施設を作りたい!働きたいと思える施設にしたい!」という目的を共有し、その目的のためにそれぞれ努力したことが、理想的な建物の完成に繋がったと思っています。

どんな施設になったのか、施設の特徴など

第8貨物ビルにおいて特に注力したのが「自動化・省人化」です。昨今、各業界で人手不足が叫ばれておりますが、航空業界においても例外ではありません。どうしても人の手で作業しなければいけない内容を除き、極力自動化・省人化するべく、最新鋭の自動化設備の検討を進めて参りました。結果として、無人搬送車(AGV:Automated Guided Vehicle)や無人搬送フォークリフト(AGF:Automated Guided Forklift)を導入し、貨物の搬送・蔵置作業の自動化を実現致しました。

無人搬送車(AGV:Automated Guided Vehicle)

無人フォークリフト(AGF:Automated Guided Forklift)

従業員の皆様が「働きたい!」と思える環境整備にも注力し、従来の貨物地区とは一線を画すような内装を意識しました。例えば、第8貨物ビル模型(1/200スケール)の設置や多くの植栽の配置、B767F型機のリアルスケール壁画やANA様にご提供いただいたB777F型機の巨大モデルプレーン(1/50スケール)等、日本を代表する海外との表玄関である空港で働いているという誇りを感じながら、落ち着きも感じられるような内装としました。

働きやすい温かみのある内装

第8貨物の屋根に設置した太陽光パネル

環境への配慮も大切なポイントで、省エネでいえば、断熱性の高い建材や高効率の空調設備の採用、巨大シーリングファンや有圧扇による空気の循環等を実施しました。

また、成田空港で初めて大規模な太陽光発電パネルを設置し、省エネだけでなく創エネも実現した結果、こうした取り組みを評価され、第三者機関から「ZEB Oriented(※)」認証も取得致しました。

その他、第8貨物ビルは既存の貨物地区の一番奥に位置していたので、新たに第8貨物ビルに近接する場所に、新しく貨物地区への出入口(ゲート)も新設しました。

こうして第8貨物ビルは、成田空港が抱えていた課題に対してサステナビリティを意識しながら、従業員の皆様が少しでも使いやすいような、理想的な貨物上屋を目指して建設されました。

※ZEB(Net Zero Energy Building)は、快適な室内空間を実現しながら、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建物。ZEB Orientedは、延べ面積が10,000㎡以上の建物において、基準一次エネルギー消費量から用途毎に40%以上もしくは30%以上省エネルギーを実現した建物のこと。

第8貨物ビルは今後どんな役割を果たしていくのか

NAAは『新しい成田空港』構想の一環として、2030年代初頭に、成田空港の東側に新貨物地区を新設することを公表しています。第8貨物ビルは、土地の購入から工事完成に至るまで約5年間のプロジェクトでしたが、新貨物地区は土地の購入・造成からのスタートであり、数多くの上屋やそれに付随する建物を全て一から作るプロジェクトになります。そういう意味では、新貨物地区を含めた『新しい成田空港』の実現は「第2の開港」と呼べるほど壮大なプロジェクトですので、全社一丸となって進めていくことになります。

第8貨物ビルは、現在の成田空港の競争力強化に寄与し、航空物流拠点としての価値を高める存在になると確信している一方で、これから進める新貨物地区の構想を深度化するにあたって、まさに試金石となる重要な役割を果たすと考えております。

第8貨物ビルの外観

航空貨物コンテナ搬送システム(CHS)

プロジェクトを終えて

成田空港の競争力強化のために

事務系

貨物営業部 貨物営業グループ

TSUBOTA TAKESHI

2012年度入社

貨物地区における施設の各種契約、施設整備の計画、各種工事調整、貨物地区における脱炭素化推進等を担当

常に「ユーザー目線(自分がユーザーだったらどう思うか・どうしたいか)」、「より良い施設を作りたい!」という想いを持ちながら仕事を進めました。プロジェクトの担当が熱意や想いをもっていないと多くの関係者の協力を得ながら物事を進めていくことはできないと強く実感しました。結果的に、お客様であるANA様や関係者様が「すごいね!これが貨物地区とは思えないね!」と仰っていただいた際には、本プロジェクトのチーム全体で頑張ってきた長年の努力が報われた気がしました。
航空貨物は人々の生活を支える重要な社会インフラです。航空貨物の競争力強化をすることが成田空港、ひいては島国の日本にとって重要な役割を果たすという認識の下、今回のプロジェクトで得られた経験(設計、工事、運用という一連の流れを全て網羅的に推進した)を踏まえ、今後の『新しい成田空港』の実現に向けて努力していきたいと思います。

空港運用や周囲への影響なく、安全に工事を完工するために

技術系(建築)

整備部 建築グループ

EBINUMA TAKUMI

2015年度入社

「第8貨物ビル新築工事」の工事監理業務、入居予定のエアラインのテナント工事やプロジェクト内の他工事との調整業務を担当

このプロジェクトは、敷地造成工事から始まり、本丸である第8貨物ビルの他、構内道路や貨物ゲートも含め貨物地区を新たに作り上げていく壮大なものでした。様々な関係者との調整業務はとてもやりがいがありました。
このプロジェクトを遂行するにあたり、空港運用への影響を最小限に抑えるだけでなく、空港周囲にも細心の注意を払い、安全に工事を完工することを最優先に据え、工事監理を行いました。具体的には、管制塔や隣接する貨物ビル、制限エリアとの工事調整をはじめ、空港周辺道路において交通渋滞を発生を防ぐため、工事車両の入場方法を整理するなど、空港内外への目配りを徹底しました。さらに、限られた敷地中で各工事業者が安全に作業できるよう相互調整を行い、昨今の酷暑等の作業員の労働環境の改善にも力を注ぎました。
このような貴重な一大プロジェクトを経験できたことは大変嬉しく、この経験を今後の業務に活かしていきたいと考えています。

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